いわい桐子

板橋区「2023年度決算」は、物価高に喘ぐ区民の暮らしや1000人を超える不登校に応えていない

2024.10.29

総選挙投票日翌日、10月28日は、区議会第3回定例会の最終本会議でした。選挙真っただ中に、板橋区議会は「決算議会」で2023年度決算の調査と審議を行ってきました。日本共産党区議団は、決算の「認定」に反対しました。私は区議団を代表し討論を行いました。討論全文は以下の通りです。

「ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、報告第1号「2023年度東京都板橋区一般会計」、第2号「同国民健康保険事業特別会計」、第3号「同介護保険事業特別会計」、第4号「同後期高齢者医療事業特別会計」、第5号「同東武東上線連続立体化事業特別会計」、5つの会計の歳入歳出決算の認定に、反対する立場で討論を行います。

 2023年度区一般会計決算は、歳入2,664億4,200万円に対し、歳出2,595億4800万円で翌年度繰越額を除く実質収支は、65億円を上回りました。不用額は59億5700万円にも上っています。財政調整基金は、23億2100万円取り崩したものの、それを大きく上回る55億4400万円の積み立てを行っています。その他4つの特別会計も黒字決算です。

 決算の認定に反対する第1の理由は、新型コロナウィルス感染症拡大への不安や物価高に困窮する区民の暮らしを支える役割を果たしてこなかったからです。

 新型コロナウィルスの感染症法上の位置づけが「5類」となった2023年5月からの1年間で、全国の死者数は32,576人に上り、インフルエンザの約15倍と格段に多く、今も多くの人が脅威にさらされ、感染症対策の継続が求められました。

 しかし、区は国が言うまま「5類」を理由に、コロナ検査も感染者の受け入れ病院の調整や移送、転院や病床確保、在宅生活への回復支援などを終了し、電話相談まで年度途中で終了しました。ワクチン無料接種も対象を限定しました。国民健康保険におけるコロナの傷病手当も適用されなくなり、区民の不安が募りました。区として、独自の感染症対策の継続や新たな支援策も行われず、区長が言う「感染症拡大防止に『万全な対策』が講じられたとは到底言えません。

 区民税の納税義務者数が前年と比べて約3千人増えているものの、そのうち7割が課税標準額300万円以下で、区が言う「景気回復基調」などとは言えない状況です。そこに、前年から続く物価の上昇が、区民の暮らしをより疲弊させました。

 区の物価高騰対策で、区民生活を直接支援したのは、国の給付金のみで、対象は住民税非課税世帯と子育て世帯に限定されました。区が住民税均等割り世帯にも対象を拡大したものの、年度途中で国も均等割り世帯へ対象を拡大したため、区の予算は、基金に積み立てられました。

 区長は「7回の補正を組んだ」と言いますが、補正で組まれた物価高対策の約102億円のほとんどが特定財源で、区単独の費用は、約8億円です。内容は公衆浴場支援といたばしPay、利子補給や信用保証料補助の他は、サマカン事業前倒しと区民まつりや農業まつりだけです。産業経済費の構成比比率がわずかに上昇したものの、1.6%に留まり、前年比で1億6千万円の増で、暮らしや業者支援は全く消極的でした。

 それどころか、区は負担増を押し付け、徴収強化をすすめました。

 値上げした国民健康保険料や高すぎる介護保険料の新たな負担軽減もせずに、保険料を払うことができない人への徴収が強化され、差し押さえ件数は区民税でも国民健康保険でも介護保険でも増え続けています。非課税世帯にまで差押えを行う姿勢は問題です。

 国民健康保険において、支払い不能世帯に対する執行停止が1万件増えていることにも、保険料の高さと厳しい生活実態が現れています。国や東京都が国保の公費負担削減を方針化している事は問題で、税の再分配によって、財政を国保に投入し、払える保険料にしなければなりません。決算総括質問において、「社保の人は二重に払っている」などと国保とそうでない人を分断する発言は、すべての国民の医療を保障する立場とは言えません。後期高齢者医療制度の保険料を払えない人は2000人以上増加していますが、75歳以上の医療費や保険料への軽減に踏み出していません。

 第8期事業計画の最終年度である介護保険は、コロナによる利用控えの影響が残ったまま、介護事業所への独自の支援は取り組まれず、区独自の利用料軽減もまったく足りていません。施設整備は予定通り進まず、看護小規模多機能型施設は1つも整備できていません。採算性に課題があることが分かっていながら具体的な支援策は実施されておりません。その結果、第8期の3年間で36億円の基金残です。

 コロナ禍に住居確保給付金特例を利用した人は最大で950件でそのうち、最も多いのが20代30代の若い世代です。繰り返す延長も2023年7月に終了となり、その後の支援はありません。区が「現金給付をしない」という方針に固執し、「家賃助成」の検討すら行わない姿勢は問題です。

 第2の理由は、「SDGs」が強調されながら、子育てや貧困対策、環境や災害対策が全く不十分だからです。

 年度当初、保育園の実質待機児ゼロの一方で、希望する保育園に入所できない子ども374人を残してスタートし、大谷口などエリアによっては年度途中で入所しようと思っても、どこも入れない状況です。待機児対策が終わったかのような姿勢は問題です。児童館の「あり方検討結果」は、i-youthなどとの連携で26館のうち「5館程度に指定管理者制度の導入」と結論付けましたが、区も「福祉職などの業務は区直営であることが望ましい」と言う児童館において、一部分であっても、不安定雇用を生む指定管理者制度の導入は行うべきではありません。

 「ヤングケアラー対策担当係長」を1人配置しましたが、喫緊に迫っているケアラー対策を本格的に進める体制ではなく、実態調査と相談対応に留まっています。

 住宅のセーフティネットである公営住宅は、必要量に対し約3万戸も不足している推計値をつかみながら、公営住宅を「1戸も増やさない」とする方針にしがみついているのは問題です。区の温暖化対策目標は低く、2023年度の環境アクションポイントでは、省エネ家電設置者の獲得ポイントが低く増額補正以上に「不用額」を生みました。命を守る災害対策は、個別支援計画も予定通り進まず、能登地震の教訓から区避難所における備蓄増や仮設住宅の土地確保が求められますが、区自身に「公助」の役割を果たす本気度が足りません。

 第3の理由は、1000人を超える不登校児童生徒を増やし続けた教育の根本的な問題解決に背を向けてきたからです。

 区立小中学校の不登校児童生徒数は、2023年度も、1,000人を超えています。区のアンケート調査は、登校渋りや保健室・別室登校の児童生徒数の把握もしていません。教員の休職・退職により年度途中で担任が変わったクラスが小中学校で42件にも上り、副校長や専科教員、少人数指導のための教員が充てられ、教員不足は深刻です。

 しかし、教育委員会は、適正規模適正配置において、「望ましい学級人数」を表明せず、中学校の学校規模を「15学級から18学級」へさらなる拡大を行うなど、教育環境の改善とは程遠いものです。教員一人が見る児童生徒の人数を抜本的に減らし、子どもの悩みに気がつける教育環境こそ子どもたちに提供すべきです。

 学校給食も用務職も民間委託で、学校支援の人材は全て会計年度任用職員で、教育委員会は、学校運営の中心となる正規の教職員不足に正面から答えていません。

 また、志村小と志4中の小中一貫校化は、「学校大規模化」に住民から大反対の声が上がり続けたにもかかわらず、合意もなく強行されています。学校給食費の無償化が2学期から始まったものの「物価高騰対策」とした姿勢や、不登校、私立、外国人学校などが対象外となっていることは、一日も早く解消し、学用品などの負担軽減に踏み出し、義務教育の完全無償化に向かうべきです。

 第4の理由は、行革に固執し、区職員の働き方は改善されず、新たな官製ワーキングプアを生んできたからです。

 2か所しかなかった区立特別養護老人ホームを2つとも民営化したことで、区は高齢者の入所施設を持たなくなり、区職員における施設のあり方や運営の水準などの考え方や管理のスキルは後退するばかりです。

 区営自転車駐車場に全面的に指定管理者制度が導入され、働くシルバー人材センターの人員が大幅に減員され、「高齢者雇用の促進」という方針も後退した上に、無人の時間が増え、全面的に回数券廃止となり、利用者にとっても働く高齢者にとってもサービス後退を生んだ責任は重大です。

 また、区立保育園1園の調理・用務と区立小学校1校の給食調理で新たに委託を拡大しました。すでに10園の民営化を行った区立保育園において、さらに3園の民営化準備を進めています。赤塚・志村の福祉事務所の「いたばし生活仕事サポートセンターの分室を福祉事務所の受付業務と一括委託にしました。ひきこもりやひとり親への支援など専門的な知識や経験が必要な業務にもかかわらずセンター職員は低賃金のままです。区が、公務労働における新たな官製ワーキングプアを生み、不安定雇用を広げたのです。

 超過勤務360時間を超える区職員数は、101名で前年度から31名減少したものの、特定事業主行動計画における目標値20名には全く届かない状況です。その中でも、最も多いのが子ども家庭総合支援センターの援助課で23人です。3福祉事務所すべてで、担当件数の最も多いケースワーカーが受け持つ件数はさらに増加しています。区職員の超過勤務が改善されない下で、会計年度任用職員は、スタートした2020年から262人も増員され、1,224人です。人口増や事務移管、児童相談所の設置、生活保護受給者の高止まりなど、区の事務量は相対的に増え続けています。にもかかわらず正規職員を抜本的に増員せず、会計年度任用職員頼みの人員配置は適切とは言えません。

 正規職員より低賃金となる会計年度任用職員のうち83%の1,013人が女性です。男女の賃金格差是正や女性の地位向上とは程遠い実態です。

そもそも、特定事業主行動計画における男性の育児休業取得率の目標が低すぎます。障害者の法定雇用率を守るためにも正規職員の抜本的な増員が必要です。

 第5の理由は、住民不在の区政運営に加え「コスト削減」と「基金積み立て」に固執し、大規模再開発だけを「聖域化」した財政運営です。

 福祉事務所と障害者支援の組織再編は、当事者への意見聴取や説明はほとんどないままで、大混乱です。高島平の地区計画は、区とURだけで非公開で検討され、住民には説明するだけで、計画に意見を反映する気もありません。「使用料手数料の検討会」は、減免の検討もなく、その原価計算のあり方は矛盾だらけで、説明責任が果たせていません。「受益者負担」と利用者に負担を押し付ける前提の検討がこういう事態を生んでいます。その検討にも住民参加の仕組みはなく、説明会すら行わないことは「住民不在の区政運営」という他ありません

 大規模再開発事業は、住民合意のないまま、大山地域で34億円、上板橋駅南口で49億円と前年を大幅に上回る予算を投入する一方で、年度当初からの依命通達で、契約差金などの不用額は、「使うな」と号令をかけ、2023年度だけで154億円も基金総額に上積みしたことは異常です。年度途中に契約差金の総額を試算して活用することもせず、基金総額は過去最高額の1,298億円で「基金積み上げ」最優先の財政運営と言わざるを得ません。

 区は「持続可能」と繰り返しますが、区民の暮らしこそ緊急事態で破綻寸前です。区民にとっての防波堤となり、暮らしを守る役割を果たす区政への転換を求めて、私の討論を終わります。

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