いわい桐子

一般質問②障害者の権利保障を求めて

2025.03.17

※板橋区議会 2025年第1回定例会が行われています。2月13日、区長と教育長に対する一般質問を行いました。順次報告していきます。

次に、障害者の権利保障を求めて質問します。・・・区長の冷たい答弁にガッカリです。

日本が障害者権利条約を批准して今年で10年です。国連障害者権利委員会が2022年に初めて行った日本政府への勧告は、日本の障害者政策が障害者を人権の主体として捉えず、恩恵的に保護するという考えに立っていると指摘し、障害者一人一人の個別事情に沿って、社会参加に必要な支援を権利として得られるよう求めています。

厚生労働省の全国在宅障害児・者等実態調査では、障害を持つ人の人数は5年前の調査と比べて24.3%増える一方、障害福祉サービスは障害児・者の約2割しか利用していません。日本の障害福祉予算はGDP比で見れば、OECD諸国の平均の半分しかありません。そこで区長に伺います。

Q.日本の障害認定や等級による支援の量の水準が、障害者本人や家族が希望する支援に届いていない実態に対する区長の認識をお答えください。

【区長答弁】

区では、障害サービスの支給量の決定に当たり、認定調査などを通じて世帯の状況を丁寧に聞き取り、できる限り個々の利用者に寄り添った対応を心がけている。個々の支給量の決定について、利用者が希望する水準に届かない事例があることは認識しているが、今後も制度の枠内において、障害者やその家族に寄り添った支援を行っていく。

障害児施策も子どもの権利保障という観点で位置づけるべきです。障害児を持つ家族からは、障害福祉への利用料補助における所得制限撤廃を願う声が上がり続けています。練馬区では障害児の育ちを社会全体で支えることが必要であるとして、2025年度から、総合支援法に基づく日常生活用具給付事業などの所得制限を撤廃し、全ての障害児を給付対象とする方針を発表しています。板橋区でも障害児の福祉サービスにおける所得制限の撤廃や利用料無償化が必要です。

Q.区が関わる障害福祉サービスの中で所得制限が設けられている事業の数と所得制限撤廃した場合の対象人数と影響額をお示しください。同時に、区として所得制限を撤廃することを求めます。

【区長答弁】

令和7年1月現在、区が関わる障害児福祉サービスのうち、所得制限を設けているのは6事業。その対象者はおおむね900人。これらの事業全てにおいて所得制限を撤廃した場合の影響額は概算で約1億円程度。現在のところ、全事業においての撤廃は考えていないが、障害児への日常生活用具給付事業に関しましては、令和7年度より所得制限を廃止し、全ての児童を対象とする予定。

障害者の65歳問題は、いまだに障害を持つ人が必要なサービスを受けられない状況を生んでいます。70代後半で一人暮らしをしている知的障害の方は、65歳以上であることを理由に、介護保険だけの利用です。本人はリハビリを受けて、今後も自宅で過ごしたいと求めていますが、上限まで利用しているため、これ以上利用できないと言われています。しかし、ケアプランを見直し、リハビリも含めて、介護保険と障害福祉サービスの組合せで利用できるはずです。区は対応していると言いますが、実際に障害者自身にサービスが届いていません。そこで区長に質問します。

Q.総合支援法の介護保険優先原則を改め、国庫負担基準における介護保険対象者の減額措置を直ちに廃止するよう国に求めていただきたい。また、区として、個々の状況に合わせてサービス内容を検討できることを当事者や関係者等へ周知徹底していただきたいが、いかがでしょうか。

【区長答弁】

障害サービスの中には介護保険と重複するサービスがある。その場合は、原則として介護保険が優先される。ただし、介護保険にはない障害特有のサービスなど、一定の要件を満たす場合においては両者の併用も可能である。区では個々の実態を踏まえた運用を徹底している。減額措置の廃止を国へ求める予定はないが、これまで以上に事業者や当事者へ区の運用を周知し、障害者の状況に応じた適切なサービスを提供していきたい。

国連勧告の一つとして、障害者団体の政策決定への参加が求められています。区は昨年、あたかも障害サービスにおけるワンストップサービスが提供できるかのようなことを示唆して、障害に係る担当や窓口の再編を行いましたが、その決定に障害当事者や障害者団体は参加もできず、蓋を開ければ、むしろ複雑で不便になったと声が上がっています。

Q.区は、今後、ワンストップサービスを目指すと言ってきましたが、再編後の1年間の利用者の声、再編による課題、ワンストップサービスに向けた検討状況をお示しください。

【区長答弁】

窓口の再編に当たり、手帳の交付や児童の手続の窓口が遠くなる方が発生する課題を想定し、電話や郵送においても多くの手続が完了できるように準備を進めた。再編直後は想定した意見が寄せられることもあったが、現在では、本庁舎で全ての手続ができるので便利になったとの声も多くいただいており、取組の成果と考えている。

今後も現在の体制を維持していくが、引き続き、より利用しやすい窓口や手続について検討を続けていく。

区の再編は障害の種類や年齢で線引きして窓口を分類したため、新たな差別やサービス低下を生んでいます。練馬区の障害者地域生活支援センターは、障害の種類で分けず、全ての障害を持つ人やその家族を対象に、障害のある人が自立した日常生活や社会生活を送れるよう支援を行っています。区内4か所に設置され、原則無料で、電話や面談等による総合的な相談、福祉サービスの利用支援、情報提供などを行っています。

その一つである光が丘の「すてっぷ」を視察してきました。いつも常駐する職員がいて、センターに行けば相談ができ、センターで過ごすこともできます。障害者にとっては居場所にもなっていることが、地域で暮らし続けるために重要です。障害の種類や年齢で分けず、区内のどこに住んでいても利便性が保障され、相談や支援につながる仕組みや居場所が必要です。

Q.直ちに障害当事者や障害者団体の参加で検討し、板橋区の障害者福祉のワンストップサービスを一日も早く実現することを求めます。

【区長答弁】

令和6年度の組織改正において、福祉事務所の障害者支援機能を本庁舎及び健康福祉センター内に移設したことで、障害種別にかかわらない、一貫した支援体制を構築したものと考えている。

また、新設した障害児支援係では、障害児の支援機能を本庁舎に集約し、通園相談や就学相談など、成長過程に合わせたワンストップの支援体制を整備した。現在のところ新たな組織改正は考えていないが、障害者やその家族の声を聞きながら、誰もが安心して暮らし続けられるまちの実現に向けて取り組む。

介護事業所の経営悪化が障害者福祉にも大きな影響を生んでいます。区内で特養ホームやデイサービスなどに加え、障害者の生活介護、放課後デイなど大規模に運営している社会福祉法人でも、経営難と人員不足を理由に、ヘルパーステーションの障害者部門を今年3月いっぱいで閉鎖すると利用者に通知しています。重度障害の子どもを持つ母親は、一つの対応で命にかかわるのに、担当者の変更による引継ぎ期間も示されない対応で、3月以降、まともな対応をしてくれる事業所が見つかるのか不安で眠れないと話しています。このままでは母親が働き続けることは困難で、介護離職ゼロなど程遠い実態です。

そもそも介護保険制度は、スタート当初から給付の充実や介護報酬増加、介護職員の処遇改善などを行うと、それが保険料や利用料の負担に跳ね返ると指摘されてきました。その矛盾を解消するには、国庫負担を抜本的に引き上げるしかありません。

Q.国に対し、介護保険の国庫負担を10%引き上げ、介護報酬の増額、介護職員の処遇改善、介護事業の継続支援を行うことを強く求めていただきたいがいかがでしょうか。

【区長答弁】

介護保険の国保負担額、国保負担率については介護保険法により定められている。介護サービス給付の50%を国、東京都、区の3者で、3者の租税である公費で賄うものとされている。令和6年度の介護報酬改定においては、訪問介護など一部報酬が引き下げられたが、全体としては増額改定となっている。加えて、介護職員の処遇改善加算も引き上げられており、現在、国に対して国保負担率や介護報酬の増額等の要望を区として出す考えはない。

介護事業所の閉鎖、撤退が相次ぐ中、民間任せでは、介護の事業を維持できないと判断した自治体は、独自に公費を投入し、介護事業所の経営や介護職員の賃金を保障する取組を開始しています。私たち区議団の区内介護事業所アンケートでも、ヘルパーが見つからずに訪問介護を断ることがあるという回答が寄せられています。

Q.区が提案した補正予算の物価高騰対策でさえも、訪問介護事業所は対象外となっています。区として直ちに区内介護事業所への聞き取りや実態調査を行い、訪問介護事業所への経済的支援策の実施を求めます。

【区長答弁】

 訪問介護報酬の改定は、他の介護事業に比べて利益率や人件費率が高いという調査結果から、改定後も利益を確保できるとする国の考えがあったものと認識している。現在、収益減を原因とする介護事業所の廃止が顕著に増加する傾向は確認されていない。

また、令和7年度に、区は介護サービス事業所の経営状況等の調査を予定している。また、区は事業所への直接的金銭給付による経営支援ではなく、ICT及びDX化の推進による人材確保負担軽減に向けた事業支援に取り組んでいく。

※区長の答弁は、いわいメモから要約したものです。正式な答弁は、区議会ホームページで後日公開されます。

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