いわい桐子

「保険証廃止」はやめて

2023.10.12

10月6日の本会議で、現行の「保険証廃止の存続」を求める陳情4本に賛成の立場で討論を行いました。全文は以下の通りです。

「ただいまから、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、陳情第14号 健康保険証の存続を求める陳情、陳情第15号 現行の健康保険証の存続を求める陳情、陳情第16号 国に対し、現行の健康保険証を存続するよう求める意見書の提出を求める陳情、陳情第21号 健康保険証の廃止をしないよう求める意見書を政府に送付することを求める陳情の委員会決定「不採択」に反対し、陳情に賛成する立場で討論を行います。

 本陳情は、医療関係団体も含めて、4つの団体から提出され、いずれも政府に対し、現行の保険証の廃止を中止し、存続することを求める意見書を提出するよう求めるものです。

 陳情に賛成する第一の理由は、医療を受ける権利を守れないからです。

 政府は、2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化する法案を今年6月に可決強行しました。その後、マイナンバーカード、マイナ保険証のトラブルが増え続けています。

 他人の情報が紐づけられていたなどということは、別人の情報に基づいた診療や投薬が重大な医療事故になりかねません。本人確認ができず窓口で10割の負担を求められたケースもあり、医療をあきらめさせている実態も報道されています。

 また、保険証廃止に伴う「短期証」の廃止も深刻です。区は、国民健康保険において、保険料を一定期間滞納した場合、通常よりも有効期間の短い「短期被保険者証」を発行してきました。そのことで、医療を受けられるようにしながら、分納相談を進めてきました。しかし、短期証がなくなれば、実態を無視した差押さえや保険証の取り上げが横行しかねず、結果として医療を受ける権利が守られません。

 第二の理由は、保険証の廃止は新たな負担しかなく、国民にとっては、何一つメリットがないからです。

 マイナ保険証を持たない人などに発行する「資格確認書」は、「申請できない人はどうするのか」と批判が起きれば、未申請の人全員に配布するなどと見直しです。今度は、マイナ保険証を持たない人を、どう特定するかが大変です。

 委員会で、国保年金課長が「登録していない人を把握する技術に関する情報は未だ入ってきておらず、システム改修も含めて、ひとり一人把握するには、時間や手間がかかる」と答弁しているように、自治体や保険組合には、新たな負担でしかありません。しかも、その方法も、財源もなにも国からは示されていません。

 マイナ保険証になったところで、医療機関の窓口で本人確認ができないケースが相次ぎ、今では、患者が別の本人確認書類を持ち歩く事態です。医療情報の反映に1ヶ月以上もかかり、お薬手帳の方がよっぽど便利です。

 日本が60年かけて培ってきた国民皆保険制度は、住んでいる所や収入に違いがあっても、等しく医療が受けられるようにするものです。それを、マイナンバーカードが崩壊させるなどということがあってはなりません。

 すでに、マイナンバー制度関連費用とマイナポイント事業で3兆円を超えています。さらに、「総点検」やトラブル対処、そして、新たに「資格確認書」をつくるなどに人員も時間も予算もかけることは無駄でしかありません。保険証廃止に固執するよりも、今の保険証を存続させることがもっとも簡単で、お金もかかりません。

 第三の理由は、マイナンバーカードと保険証の一体化が、医療・社会保障の抑制と個人情報をビジネスに2次利用することが目的だからです。

 2013年6月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」は、「『ヒト』『モノ』『カネ』と並んで『情報資源』は新たな経営資源」とし、この情報資源の活用こそが経済成長をもたらす鍵とまで宣言しました。医療DXの狙いは、国民に「健康の自己責任」を押し付け、財産も医療情報も監視し、医療・社会保障抑制のツールにすることです。

 「マイナンバー情報の連携で、ビジネス利用も可能となる」と話す経済同友会の代表幹事であるサントリーの新浪剛士社長が、来年秋の保険証廃止を「納期」として守れと言い放つのは、財界主導のビジネスへの活用に国民の情報を手渡すものに他なりません。

 第四に、世界では社会保障番号に対する警鐘こそ広がっている中で、日本だけが逆行しているからです。

 G7を構成しているドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、カナダでも、個人を識別する番号と社会保障の番号は分けて使っています。

 アメリカでも、カナダでも、社会保障番号と医療情報は紐づけしていません。カナダは、「機密情報なので持ち歩かないでください」と厳しい警告までしています。世界の流れは、個人情報は機密事項で、警鐘と見直しの方向なのに、日本だけが、逆行しています。

 反対した委員は「保険証廃止は覆らない」と言いますが、ドイツでも・フランスでも国民の反対を受けて導入を見送り、イギリスでは、個人情報流出などの問題でIDカード法が廃止となっています。日本政府こそ保険証廃止を求める国民の声を受け止めるべきです。

 最後に、共同通信社の7月の世論調査によると、健康保険証を来年秋に廃止する政府方針に関して、76.6%が撤回や延期を求めています。このことは、陳情に反対した委員の「総点検実施で国民の不安払拭」や「説明不足や誤解による不安」などという次元ではありません。すでに、NHKの調査では、マイナ保険証の返納は、4月に124件、5月に205件、6月に899件と増え続けています。

 今一度、陳情を採択し、区議会あげて、現行の保険証存続を国へ求めることを呼びかけ、私の討論を終わります。」

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