第3回定例区議会での一般質問(9月16日)で私がおこなった質問前文と答弁(未定稿)は以下です。
牛尾議員/日本共産党区議団の一員として一般質問を行います。
最初に千代田区でのまちづくりについてです。
千代田区では各地で再開発が進められてきました。
その多くは市街地再開発事業で、個人施工であったり組合方式であったりと手法は様々ですが、共通しているのは、広場空間の確保などが地域貢献とみなされ、容積率を上乗せした超高層の建築物に生まれ変わっているということです。
市街地再開発事業では一定の広さの土地を統合します。
計画地の地権者が多ければ多いほど意見がまとまりにくくなり、現在、170メートルの超高層ビルが計画されている外神田一丁目南部地区や、この間、都市計画決定が決まった小川町三丁目西部南の計画でも賛成か反対かで、住民や地権者同士の対立が生まれています。
もちろん、その地域をどうしていくかは、その地域の地権者や住民が決めることです。
賛成・反対など様々な意見が出ることも当然でしょう。
ただ、再開発を進めるに当たっては、賛成する方、反対する方がお互いに意見を十分出し合えるよう、情報の公開や十分な議論が必要です。
ましてや外神田一丁目のように、再開発地域に公有地が含まれていたならば、なおさら慎重な議論やできる限り計画の公開が求められます。
今年の第47回千代田区民世論調査では、「まちづくりのよくするために必要なもの」の問いに、「まちづくりに関連するデータの公開」、「住民と行政がまちづくりを議論する場」との回答が1位、2位でした。
ただ、この間、再開発地域ではビルのテナントの方から「お客さんから言われて初めて計画を知った」、また、ある地権者の方からは「説明会の案内で初めて知った」などの声が聞かれました。
まず、お伺いします。
区はこの間、進められてきた、あるいは現在進められている市街地再開発について、データの公開や議論の場の確保が十分に行われているとお考えですか。認識をお聞かせください。
千代田区では今後も再開発に向けた動きが各地で進んでいます。
私は、再開発が計画されている神田のある地域の地権者さん、ビルオーナーさんからお話を伺ってまいりました。
この地域では計画地を幾つかの区画に分け、超高層のオフィスやマンションを建設することが計画されております。
ビルオーナーさんや地権者の方からは、「再開発は必要だと思うが、高いビルを建てる大規模な開発はデベロッパーをもうけさせるだけ」、「まだ使えるビルの空き室を改修して若い人や学生が住めるようにすれば地域ににぎわいができるのではないか」、「代々、このビルを守ってきた。簡単には手放せない」など大きな開発に疑問の声が出されました。
この地域で、仮に計画通りに市街地再開発が進められれば、こうした方々は自らの土地を超高層ビルの床に変えるか、それが嫌なら出ていくしかの2つしか選択肢がありません。
確かにこの地域は住民が減る、空き室が増える、ビルオーナーの方は自ら建て替えや改修ができないなど様々な課題があります。
実際に、「私の代でこのビルは終わりだからどうなってもいい」とか、「周りは全て買われているから仕方がない」などの諦めの声も聞かれました。
しかし、そうした様々な問題を解決するには区画全体をまとめて建て替える大規模再開発しかないのでしょうか。
7月15日、東洋経済オンラインは、「「賞味期限切れ」が問う日本式街作りの大問題」と題する記事を配信しました。
記事の中では大規模開発について、「解体や建設にかかるコストや環境への負荷、オフィスや住宅の充足度、投資額と将来の価値の収支バランスなどを考えるといろいろ疑問」とし、大規模再開発について「そろそろ違うやり方も考えるべき時期ではないかと思うのである」と述べています。
その上で、中央区の日本橋横山町・馬喰町問屋街地区で行われている「新築しない再開発」を紹介していました。
日本橋横山町や馬喰町ではこの間、古いビルをリノベーションしたゲストハウスやおしゃれなカフェ、レストラン、親子向けカフェ、小さな工房など、様々なお店が増えています。
先日、この地域の街づくりに取り組んでいる横山町奉仕会の皆さんにお話を伺ってまいりました。
横山町・馬喰町は古くからの問屋街ですが、ここ数年、閉店した店舗などがマンションやホテルに立て替わっていきました。
問屋街の皆さんは「このままでは街が壊れていく」と危機感を持ち、問屋街を守るとともに、この間増えてきたマンション住民の皆さんとも一緒に街並みを守れないかと考え、今ある建物を生かした再開発をしていこうという結論に至りました。
ただ、当初は苦労も相当あったそうで、ホテル建設やマンション建設について、開発事業者とまともな交渉ができなかったそうです。
そこで、区とも中央区とも、活性化に向けた協議を重ね、区は市街地開発事業指導要綱で、一定の区域でのまちづくりのルールを定めることができるデザイン協議会の設置ができるようになりました。
以後、横山町・馬喰町に日本橋問屋街デザイン協議会を設置。問屋街のまちづくりのルールを策定しました。
対象区域に建築物や工作物の計画を行う開発業者は、確認申請等の手続前にデザイン協議会と計画内容について、開発協議を行うことが求められます。
協議会は区域内で発生する建築物の行為に、まちづくりの観点から計画内容を審査。必要に応じて修正等を事業者に要請します。
また、協議会では閉店する店舗や中古のビル空き室オーナーさんなどと交渉し、リノベーションしてテナントを誘致、こうしたことも行っております。
もちろん、どうしてもビルや店舗を手放さざるを得ない事例も出てきます。
地元の皆さんは区とも相談をして区はURにまちづくりの支援を要請します。
空き物件が生まれると、地元が望まない開発を抑えるためにURが物件を購入し、さらにテナントや企画を立案する人などの誘致も行い、土地の有効利用を進めております。
私は話を伺って、問屋街の皆さんのまちづくりとそれを支える中央区の姿勢に学ぶべきものがあると感じました。
では、千代田区では全くそうした考えがないかと言えばそうではありません。
5月に策定された新しい都市計画マスタープランではまちづくりの基本方針の中で「地域それぞれが継承してきた街並み・環境を保全する」とし、「これらを寸断したり希薄化をもたらしたりするような建設・開発を抑制していきます」と述べております。
そこで、質問いたします。
都市計画マスタープランでの「街並み・環境を保全」や「これらを寸断したり希薄化をもたらしたりするような建設・開発の抑制」を具体的にどのように行っていくのか区の考えをお聞かせください。
さて、2003年3月、千代田SOHOまちづくり推進検討会が千代田区に対し「中小ビル連携による地域産業の活性化と地域コミュニティの再生」という提言を行っております。
提言では、「散在的に増加しつつある民間所有の中小ビルの空室等を地域の連携により共同利用することにより、それらのスペースがネットワーク化され、あたかも1つのビルとして有効活用が図れるようにするもの。幹線道路に囲まれたおおむね半径250メートルから300メートル程度の徒歩圏の街区を一つの単位として設定し、このエリアでビルオーナー個々が連携し共同利用できる仕組みをつくることにより、コミュニティの新たな結びつきと産業の活性化を図っていくことを目指す」としています。
この提言の内容の中には、今日のまちづくりにも生かせるものがあるのではないかと思います。
そこで、中小ビルを生かしたまちづくりの在り方を区としても検討してよいのではないかと考えますが、見解をお聞かせください。
地域のまちづくりの主体は当然、その地域で住み、働いている方です。まちづくりをどうしていくのかも、その地域の皆さんが十分に議論を重ねて決めていくものです。
新築しない再開発と言っても、外から押しつけてもうまくはいきません。
ただ、大事なのは、再開発といった場合、大規模再開発でなく既存の建物のリノベーションなどでのまちづくりの方法もあるということを知らせることではないでしょうか。
例えば豊島区では、豊島区リノベーションまちづくり検討委員会を設置しております。委員には専門家や学識経験者、ビルオーナーのほか、区からは副区長も参加をし、遊休化した不動産などの資源と地域資源を活用し、リノベーションのまちづくりを行うことを目標にした豊島区リノベーションまちづくり構想を策定しております。
また、住民やオーナーさんなど広く受講生を募り、「リノベーションスクール@豊島区」を開催。
また、町内会長・商店会長向けのリノベーションまちづくりの説明会・事例見学会などを開催しております。
そこで、千代田区でも千代田版のリノベーションスクールを開催することなど、既存の建物を生かしたまちづくりについての情報発信を行うことを求めますがいかがでしょうか。御答弁をお願いします。
さて、まちづくりを進める上で大事な役割の一角を担うのが中小ビルオーナーです。町会活動やお祭り、地域コミュニティの核を担ってきました。
しかし、そのオーナーさんたちが苦境に立たされております。
テナントが入らず、収入減。コロナによってさらに家賃の値下げをテナントから求められる。高い固定資産税も重荷になっております。
それでも千代田区で住み続けたいと願うオーナーさんにとっても、馬喰町のようなまちづくりは一つの方向性を示すのではないかと思います。
ただ、建て替えや改修の費用、空き室対策、様々なことについて支援も必要です。
区として中小ビルオーナーさんの困っていることなどを聞き取るなど、実態調査を行うことを求めますがいかがでしょうか。
続いて、コロナ禍における児童の学びについて質問いたします。
子供へのコロナ感染が急増し、学校再開に当たって不安の声が広がる中、新学期が始まっております。
学校での感染拡大防止のためにマスクの着用や消毒、教室の換気などの一層の徹底や学校での検査の拡充を求めたいと思います。
さて、子供への感染が広がる中で登校を自粛する児童への学びを保障するために、各学校ではオンライン授業を行っております。
そのために、児童や生徒がタブレット端末を使用する回数も増えていきます。
タブレットの活用は学びを保障する一つの手段となりますが、一方で保護者の中からは使用時間が増えることによる子供への健康への影響を心配する声も聞かれます。
GIGAスクール構想の導入で一人一台端末の配備が行われ1年が過ぎました。
一方、一人一台端末が子供と教育に及ぼす効果や影響についての研究・検証はまだ十分に行われてはおりません。
画面から発せられるブルーライトによる視力への影響、電磁波の被曝についても専門家から子供へのリスクが指摘され始めています。
また、動画やゲームへの依存、長時間の使用の子供の脳への影響はないのかという心配も聞かれております。
そこで、区として一人一台タブレットの導入から1年が過ぎた現在、子供への影響を定期的に検鉦していく必要があると思いますが、区の見解をお聞かせください。
答弁を求め、一般質問を終わります。
教育担当部長/牛尾議員の一人一台タブレットの子供への影響の検証についての御質問にお答えいたします。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中で新学期を迎え、本区では、マスク着用や消毒、換気などの感染症対策を徹底しながら学校・園の運営を継続していくことを基本としつつ、各学校で感染不安等により登校できない児童・生徒に対しても、オンラインを活用すること等による、学びの継続に努めています。
議員の御質問にあります、タブレットを使用する際の児童・生徒への健康への影響につきましては、導入当初より各学校で配付している「タブレット活用のルール」に基づき日頃より使用の仕方などを指導しているところです。
具体的には、正しい姿勢で画面に近づきすぎないように気をつけること、30分に一度は目を休めること、1日に使用する時間を決めること等を各学校で指導しております。
議員御指摘のように、タブレット端末を授業等での活用を進める一方で、使用する児童・生徒の心身の健康への影響も考慮していく必要があると認識しており、定期的な検証の必要についても研究をしつつ、学校教育でのICTの活用を進めてまいります。
議長/まちづくり担当部長。
まちづくり担当部長/牛尾議員のまちづくりの御質問についてお答えいたします。
早期に都市化の進んだ本区においては、多くの建物が老朽化による機能更新の時期を迎えております。
また、特に中小規模の建物の所有者の方々からは、建て替えを検討したものの、小規模で細分化された敷地や経済面などから、個別での建て替えが困難な状況であるとの意見も寄せられております。
そのような状況の中、様々な地域において、よりよいまちを目指すために、地域課題の解決や魅力の創出に向けた検討が行われており、まちの将来像を描いたまちづくり構想を策定し、地区計画の制定を見据えるとともに、具体的な手段としての市街地再開発事業の検討に取り組まれております。
議員御指摘の市街地再開発事業の対象となる地区についてのデータの公表や議論の場の提供については、構想や地区計画の検討の過程でこれまでも共有を図り、場を設けてまいりました。
再開発事業における権利関係の調整など、検討の熟度に応じて慎重な対応を要する情報もあることから、データの公開や議論の場の設定については、今後も適切に対応をしてまいります。
次に、都市計画マスタープランで掲げている街並み・環境の保全と、建設・開発の抑制のお尋ねですが、秋葉原や神保町、丸の内や霞が関など、千代田区には商業・文化・教育・行政・経済など多様な都市機能が集積し、特色ある界隈を形成しております。
また、江戸城の城郭に由来する皇居の緑とお濠、神田川、日本橋川は、本区のみならず、23区におけるエコロジカルネットワークの核となっております。
また、千代田区は、江戸の町割りを継承しながら、魅力ある複合市街地として発展してきました。
このように、界隈の個性や緑と水辺のネットワーク、複合市街地の魅力を希薄化させる開発・建設は抑制する必要があると認識をしております。
一方で、地域の個性を高めたり、緑と水辺の公共空間とその連続性を創出したり、にぎわいある複合市街地の形成を誘導するような建設・開発は、これを積極的に誘導してまいります。
次に、「中小ビル連携による地域産業の活性化と地域コミュニティの再生」の提言を生かして、中小ビルを生かしたまちづくりの在り方を区として検討してみてはとのことですが、現在も提言の趣旨を踏まえて事業が実施されており、連携してまちづくりを進めることが重要であると認識しております。
次に、既存建物を生かしたまちづくりについて、リノベーションスクールを開催するなどの情報発信についてですが、本区においては既に、まちみらい千代田と連携した、ちよだプラットフォームスクエアにおいて、家守事業を核とした民間不動産活用型リノベーション・エリアマネジメントに取り組んでおります。
様々な世代と地域が共に創造しながら、新たなビジネスや文化を生み出しいくための拠点として活動をしております。
具体的には、旧酒店のビルをリノベーションし、錦町ブンカイサンとして地方との連携を図り、低層部は食べられるミュージアム、上層部は農耕型インキュベーション拠点として生まれ変わりました。また、「レン ベース」などリノベーションによるまちづくりに取り組んでもおります。区としては、その情報発信や発展に向けて引き続き、連携や支援を図ってまいります。
最後に、中小ビルオーナーさんへの聞き取りなどの実態調査についてですが、リノベーションや建て替えだけではなく、様々な問題を抱えていることと思われますので、何を目的に聞き取りをするのか、それをどう生かしていくのか、聞き取りは中小ビルオーナーさんだけでよいのかなど、様々な観点からの検討が必要でありますので、まちづくりの視点だけではなく、関係する部署とも連携を図ってまいりたいと考えております。