牛尾こうじろう

神田警察通り沿道整備工事について

2024.05.01

神田警察通り沿道整備 住民同士の話し合いと合意ふまえて

[1] 区は工事を中断し、沿道住民同士の話し合いの場の設置を

神田警察通り沿道整備の2期工事における街路樹伐採工事に対して、住民が対峙する深刻な事態がうまれています。また住民による深夜の木守り活動は、人道上からも放置できません。この現状をどう打開するかは、区政の大きな課題のひとつとなっています。それは5期に及ぶ神田警察通り全体の整備への影響にとどまらず、住民主体のまちづくりのあり方についても重要な課題を提起しているからです。

現状を打開する道は、街路樹に対して多様な意見をもつ沿道住民間の徹底した話し合いと合意しかありません。区の役割は、沿道住民間の話し合いの場づくりに努めることでした。2年半前の区議会の議決に基づく工事とはいえ、強引ともいえる工事は住民間の亀裂を大きくするだけです。また区議会もこの事態を静観していていいはずがありません。当該工事の請負契約の議決が、今日の事態を招いた直接の原因だからです。

区は工事をいったん中断し、区議会と連携しながら、住民間の合意形成と地域コミュニティの再生を目的とした、沿道住民同士の話し合いの場をただちにつくることを強く求めるものです。

[2] 話し合いをすすめるために整理すべき3つの問題

まちづくりとは、特定の地域において住民主体ですすめる継続的な住環境の改善運動だと考えます。同時にその運動をとおして、人と人とのつながり、コミュニティを強めることも重要な目的です。

そうしたまちづくりにつながる住民同士の話し合いをすすめるためには、すくなくとも整理・確認すべき3つの問題があります。

第1は区と区議会が、沿道住民同士の話し合いと合意した内容を尊重するというまちづくりの原点をふまえた立場にたつことです。

第2は、神田警察通りという区道整備を何に依拠してすすめるかです。それは住民自治の力をおいて他にありません。街路樹への価値観を異にする住民たちが徹底して話し合い、折り合いをつけながら合意形成にむかうことで、住民主体のまちづくりが実現できるのではないでしょうか。実際に、区内でも明大通りの整備計画や六番町偶数番地の地区計画決定などでは、多様な価値観をもつ住民同士が話し合い、折り合いをつけながら合意にたどり着きました。

こうした実践例は私たちに何を教えているでしょうか。まちづくりでは住民間に勝者・敗者をつくらないことの大切さです。住民間に勝敗をつけることになれば、地域コミュニティに取り返しのつかない亀裂をうむことになりかねません。

神田警察通りをどのように整備するかは、まちづくりの問題です。一部大企業の利益のために都市計画制度をゆがめ街路樹を伐採し文化財まで壊してしまう神宮外苑の再開発や、隣接する内幸町1丁目街区の市街地再開発事業とデッキ(連絡橋)でつなぐことで大量の樹木を伐採することになる日比谷公園整備問題とは、性格をまったく異にしています。

都市計画とまちづくりを区別し、区道整備は沿道住民同士の話し合いと合意をふまえるという住民自治の原則を確認すべきと考えます。

第3は、住民訴訟と、住民同士の話し合いが両立できるのかという問題です。

イチョウの保存を求める住民運動の根底には、街路樹に映し出されたまちへの熱い思いがあるのではないでしょうか。その運動は、街路樹の多面的な役割や沿道協議会のあり方など、今後のまちづくりにつながる大事な視点を提起してきました。

また、陳情等による区議会への繰り返しの働きかけは区議会をも動かし、区に沿道住民を対象にしたアンケート調査や複数の専門家からの意見聴取を実施させる原動力にもなってきました。アンケート調査には、質問内容や低い回答率など不十分さもあったものの、その結果は街路樹に対する意見の多様さを浮き彫りにするものでした。「新たな樹種」を求める声も少なくありませんでした。それだけにアンケート結果は、多様な意見をもつ住民同士が話しあう場と時間の確保の必要性を改めて示すものとなりました。

それにもかかわらず、区は2021年第3回定例会に「沿道協議会で街路樹の取り扱い、樹種について確認した」と特定の樹種を前提とした工事請負契約を提案し、自民党などはその採択を急ぎました。話し合いの流れを断ち切った責任はまぬがれません。

一方、一部住民は「イチョウを守る」ための住民訴訟にふみきりました。多様な価値観をもつ住民が互いにリスペクトし、折り合いをつけながら、合意を形成していく過程と、裁判により結論を下す過程は、果たして両立しうるものでしょうか。

住民間の話し合いと合意で解決しコミュニティの再生もはかる。この方向性を関係者間で共有できれば、裁判を継続するかどうかも自ずと明らかになるのではないでしょうか。

[3] 区議会が積極的なイニシアチブの発揮を

神田警察通りの整備事業は5期まで続きます。地域コミュニティを育みながら整備事業をすすめていくうえで、工事請負契約を議決した区議会の果たすべき役割は極めて大きいものがあります。何よりも区議会には区と連携し、「沿道住民の話し合いの場の設置」、「住民間で合意した内容の尊重」、という枠組みを早急に構築する責務があります。

同時に区議会は今回の事態を直視し、今後に活かすべき教訓を引き出し、区と共有する努力を開始すべきです。とくに住民参加の抜本的強化は教訓の核心部分です。その具体的内容として次の2点が重要と考えるものです。

ひとつは、沿道協議会をジェンダー平等の視点にたち、希望する沿道住民の自由な参加を保障する方向で見直しをはかることです。そうしてこそ沿道協議会は名実ともに“民意を代表する組織”となるのではないでしょうか。

もうひとつは、まちづくりの構想段階から幅広い住民参加と情報公開をルール化することです。神田警察通りの沿道まちづくりについては、2011年6月に「整備構想」がつくられ、その2年後の2013年3月に「整備構想」を具体化する「ガイドライン」が策定されました。住民主体のまちづくりのためには「整備構想」の段階から幅広い住民参加がなされるべきでした。

草の根の要求に根差したまちづくり運動は、本来、住民と区職員の協働作業ですすめられるものではないでしょうか。双方が対峙する不幸な現状は一刻も早く乗り越える必要があります。

そのためには区議会がイニシアチブを積極的に発揮する時です。

 2024年4月18日

日本共産党千代田地区委員会

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