参政党の憲法草案はすでに多くの方が批判しているのですが、財政については、あまり見かけないので先に取り上げます。経済学を少しでも勉強したことがあれば、脱力間違いないシロモノです。
第二十九条 国は円を単位とする通貨を発行する権限を有する。
2 紙幣の発行は、法律に基づき、国が監督する中央銀行に委ねることができる。
3 国は通貨発行及び金融政策が外国または国際機構の干渉を受けないよう措置を講ずる。
第三十条 財政は経世済民を目的とし、通貨発行により資金を調達することを原則とする。
(略)
第三十一条 税は唯一の財源ではない。税及び社会保険料の設定変更は、国民の生活に配慮し、法律に基づくことを要する。
2 税及び社会保険料の国民所得に占める割合(国民負担率)は、特段の事情がない限り、国民所得の四割を超えてはならない。
円に関しての規定を憲法に入れなければならない理由がわかりません。大日本帝国憲法(以下、明治憲法)にも、日本国憲法(以下、憲法)にもこのような条文はありません。
また、国が中央銀行を監督することになっていることにも驚きました。一般的には中央銀行が政府から独立すべきということになっています。
通貨発行や金融政策が、外国または国際機構の干渉を受けない措置、どうするのでしょうか?アメリカ以外の国は、日本に対して強く干渉することはありません。国際機構とは、IMFのことを言っているのでしょか?IMFの役割は、国際通貨の安定なので、その限りおいて各国に対し干渉を行うことがあります。外国または国際機構よりも影響が大きいのは、為替相場の変動でしょう。国際間で通貨の取引、貿易を行うならば絶対に避けられません。これらの、影響、干渉を受けないというのであれば、鎖国をするしかないでしょう。
本当に驚くのは、第三十条です。「財政は経世済民を目的」、よくわかりません。経世済民という言葉は略して、経済ですが、「世を経め、民を済う」ということですが、「こんな言葉、知ってますよ~」と入れてしまったように思えてしまいます。そもそも、学問的には、経済学という大きなカテゴリーの下に財政学があるのですが、そうするとなおさら意味不明です。
「通貨発行により資金を調達することを原則」!!!すごいです!「税金払わなくていいんだ!」とか思う人が・・・いないと思いますね。近代に入って大抵の国家が税収と公債を主たる財源としているのに、通貨発行益が主たる財源ってすごいですな。かつて王が国を統治していた時代は、王室にふんだんな財産がありました。しかし、近代国家ではそのような財産はなくなり無産国家・租税国家となりました。税収や公債ではなく、通貨発行益を主な財源とする国など存在するのでしょうか?また、存続できるのでしょうか?国の監督のもと、中央銀行が通貨を発行できるそうですが、制限はあるのでしょうか?過剰な通貨発行のためにハイパーインフレーションになるのが落ちではないでしょうか。超円安の可能性もあります。まあ、参政党が憲法を変えたら、鎖国しなければ成立しないので、この心配はないのでしょう。
第三十一条では、税及び社会保険料の国民所得に対する割合を、4割に制限するらしいですが、草案に書かなければならないことでしょうか?
参議院選挙の東京選挙区の候補者は、「『正しい国家観』『正しい貨幣観』を備えた才媛」らしいですが、「正しい貨幣観」を備えていたら、このような草案、噴飯ものでしょう。参政党の言説に常に感じるのは、専門的知に対する軽視です。経済学、財政学の専門家は、きちんと批判していただきたいと思います。
