<続報 千駄木の郷>旧区立の存立条件は区内のケア水準向上に役立っている
法人撤退を区は即決「了承」?
特別養護老人ホーム・千駄木の郷の運営法人・桜栄会が区所有の特養の建物使用契約が満了する令和8年3月末で撤退と公表しました。
撤退する事業は特養に留まらずデイサービスや高齢者安心センター運営等、駒込地区の介護福祉全般にわたり、20年を超えて培われた職能やケア水準が喪失の危機と言えます。
桜栄会と区の打合せ「メモ」と桜栄会の撤退の「申出」を公開請求で入手し、次のような経過があることが明らかになりました。
異動挨拶で了承即答
「メモ」には区側が桜栄会の「撤退」意向を認識したのは桜栄会本部(立川)を区の部課長が訪問した今年8月9日と記されています。
この訪問は(区の)「人事異動挨拶及び情報交換」が目的でしたが、法人理事長から「次の事業者に引き継ぎたい」と申入れがされ、部課長は「利用者・職員の負担を最小限に」と条件を付けつつ「スムーズな引継ぎをお願いしたい」と、撤退を即時に了承していたことが判明しました。区長は事後報告を聞いたのでしょうか。
撤退の原因は18年遡る?
桜栄会は「申出」の中で撤退理由について、開設から5年目の2006年度頃から「経営が不安定」になり「事業継続が難しいと判断」と述べています。この時期、千駄木の郷は他の3特養(大塚みどり・くすのき・白山の郷)とあわせて「区立」でした。つまり、「撤退」に至る原因の一端は区立時代に遡るというのです。
旧区立特養とは何か
2007年に区立特養くすのきの郷の法人(同胞互助会)が「介護報酬の不正請求」を行い、区の特養の設置資格が取消されました。その際、千駄木の郷含む旧区立の4特養は、運営を区から受託する法人が、運営主体となり今まで旧区立特養を運営してきました。
この時、区は特養建物と土地を無償貸与したことで、介護報酬を食事や人件費等、ケアの水準向上に投入できる財政上の条件を生み「スイーツがおいしい」(白山の郷の法人が運営するデイサービス)との声に現れているように、区内の介護福祉水準を引き上げるのに貢献しているものと見られます。旧区立特養の介護ケアの水準は区民が作り出した公共財と言えます。
区は撤退を容認する構えですが、介護福祉水準の維持・向上のためにも長年にわたり蓄積された法人・職員の力を確保すべきです。
