災害対策はまず発生時の被害を最小限に抑えることが大切ですが、大規模な災害が起こった場合は、避難が避けられません。
東日本大震災をはじめ、熊本地震、西日本豪雨では学校体育館が避難所として使われましたが、厳しい生活環境の下で、せっかく助かった命が失われる、いわゆる関連死が多発しました。
熊本地震では、直接死50人に対し関連死が4倍の200人を越える事態になっています。そうしたことを考えると、いざという時に避難所の良好な環境を設えること、そのための備えが大切になります。
特に大事な点は、第1に食事です。
熊本地震のときのある避難所では、10日経っても菓子パン1個だけ、ごはんとわずかなおかずだけと言った状況があったようです。これでは体調を崩す人が出てもおかしくありません。
練馬区や東京都が準備している食料はアルファ米(お湯や水を加えるとやわらかいご飯になる保存食)やクラッカーですが、これでは十分な栄養は取れません。
こうした食事は短期間で終わらせ、栄養バランスのとれた温かな食事を提供することが避難者の健康維持のうえで大切です。また、食堂スペースをつくることも大事な点です。
第2はベッドです。災害が起こるたびに、避難所でシートと布団を敷いた床の上にひしめく避難者の姿が見られます。しかし床の上では寝心地が悪く、よく寝られません。
段ボールを使った簡易ベッドが熊本地震の際に使われるなど、知られるようになっています。
練馬区もそのことは認識していて、業者との協定で発災時に提供してもらうことになっていますが、すべての被災者に行き渡るよう万全を期してほしいと思います。
第3は、トイレです。トイレが数が少なくて並ぶ、あるいは汚いと、出来るだけ行かずに済ませようとなります。水分補給を避け、避難所にいながらエコノミー症候群を発症する危険が高まります。
国際赤十字が提唱している「スフィア基準」では、トイレは20人に1つ、女性3:男性1の割合で必要とされています。
北海道胆振地震では、避難所にコンテナ型の仮設トイレや福祉トイレカーが駆けつけるなどしました。
並ばない程度の数を用意し、清潔さを保ち、女性に配慮したトイレの設置が避難所に出来るよう、備えることです。
↑北海道厚真町の避難所に苫小牧市から駆け付けた福祉トイレカー
3つの対策を基本に、震災関連死を生まない万全の備えをするよう、区に求めました。「プライバシーの確保など、避難生活の質の向上に取り組む」としています。
練馬区防災計画では、「自分たちのまちは自分たちで守る」など自助・共助が強調されています。しかし実際に災害に直面すれば、そこには限界があります。
今日の災害は規模を増しており、従来の延長線上でない対策が求められます。行政がそのための予算を確保すること、とりわけ国が前面に出て、自治体任せにしない防災・災害対策が必要です。
イタリアでは国が責任もって関与し、食事やテントを用意することで関連死が直接死を上回ることはなくなったといいます。
政府はこれを見習って欲しいと思います。いま厳しさを増しているのは他国との関係における安全保障ではなく、自然災害こそ厳しくなっている、このことを認識し、防災対策にこそ予算をかけるべきです。