公契約条例は、自治体からの委託や公共工事を受注した事業者のもとで働く従業員に対し、適正な労働条件や賃金を確保するために定めるものです。
例えば渋谷区では
「建設業の特性である重層構造により、下請負、孫請負において、賃金が削減され、現場で直接従事している労働者に低賃金が押し付けられてしまうという懸念から、その状況を改善するため、受注者等に労働者への一定額以上の賃金支払いを義務付け、労働者の適正な労働条件を確保する ための 取組み」
とされています。
渋谷区は当初は工事請負契約に限定していましたが、業務委託や指定管理にも広げています。
賃金については、「労働報酬下限額」を設け、職種によって細かく設定されています。これにより一定の賃金水準を確保するものです。
練馬区に対してもこの間公契約条例の制定を求めてきましたが、区はダンピング受注の防止、指定管理者についても労務環境の取り組みをしていて、公契約条例によらず取り組んでいるとし、他の区は練馬がやっていることを条例にしているとまで答弁しています。
しかし区は労働報酬下限額を定めているわけではなく、「労働条件は、事業者の責任により整備されるもの」としています。また「設計労務単価」をもとに積算して予定価格を設定、ダンピング防止をはかることで適正な賃金水準の確保に努めている」といいます。
※設計労務単価:公共工事における「建設労働者の賃金単価」のことで、公共工事の工事費の積算に用いられる。
賃金向上に着実につなげる必要
しかし、それは会社に支払われるところまでであって、労働者の賃金にストレートにつながっているかどうかは別の問題です。
公契約条例を制定した自治体は都内11区になり、うち10区は賃金条項を定めています。いま建設現場では若手が不足しており、建設業に入る人を増やすためには待遇の改善が必要です。
現場労働者に賃金が行き届かなければ労務単価があがっても賃金はあがらず、若い人の入職が促されず、さらには公共工事を担う労働者を確保できないことになりかねません。
公契約条例を制定し、働く人を大切にする姿勢を示せ
その点、公契約条例には、優秀な人材の確保や後継者不足解消、地域経済の活性化などの効果があると言います。練馬区なりに取り組んでいることはあると思いますが、より実効性を持てるよう、公契約条例の制定を求めました。
区はこれまでも答弁したような、現在の仕組みで取り組んでいることを繰り返し、「民間事業者の従業員の労働条件の基本は法律で定めるべきもの」とし、制定しないとの答弁でした。
相手が民間だからで済ませていいのでしょうか。公共工事や公共施設の指定管理者、保育園などの業務委託で働くことも公共性のある仕事であって、自治体にはそこで働く労働者の扱いについても公的責任があるんじゃないでしょうか。
今後も繰り返し、制定を求めていきたいと思います。