練馬区立美術館の再整備計画は、基本設計事業者を決定するなど、見直しを訴える区民の声をよそに進められています。
サンライフ練馬の代替——不便は避けられない
この計画が進めば、サンライフ練馬は取り壊されることになります。体育室がなくなりますが、区は松の風文化公園の拡張後や光が丘第7小跡でフットサルやバレーボールができると言います。
しかしどちらも、サンライフを利用してきた住民からすれば利便性が下がることは明らかです。住民に説明するのは当然として、結局不便になる問題は解決できないのでは?と問いました。
区は、「丁寧に説明し、理解を図っていく」と答弁。
それは理解してもらうのではなく、「あきらめさせる」ということではないでしょうか。
また、別のときの質疑であった、会議室が拡充されるとの答弁について、中村橋区民センターで拡充するとのことですが、会議室でない部屋を会議室としたり、タイムシェアを導入するということであり、そもそもサンライフの会議室や研修室がなくなる分、トータルで床面積は減少します。
拡充とは言い難いのではないか、と問いました。
答弁は、「中村橋区民センターについては拡充すると答弁したもの」というものでした。先の答弁は、サンライフの代替という点は考慮していない答弁だったということです。さらに続けて、「各施設が抱えている課題を一体的に解決すること。・・・質の高いサービスを提供するようにすること。そうした考えで進めている」とも答弁。
代替ではなく、サンライフ練馬の存続を
しかし、サンライフ練馬についていえば、施設状態に課題があるわけではありません。まだまだ使える施設です。区はサンライフが勤労者の施設という位置づけなのに、利用実態がそうなっていないことを理由に廃止する、必要な機能は代替を設けるとしてきました。
代替のやり方自体にも疑問はありますが、結局多くの機能について代替を設ける形になっています。であれば、やはり必要な施設だということではないでしょうか?サンライフ練馬は存続させるべきだと訴えました。
廃止ありきの理由付け
しかし区の答弁は、「勤労者福祉施設という施設の機能が低下、目的と利用実態が乖離している。中村橋区民センターは、老朽化などの課題があり、これらの課題を一体的に解決するため、施設の統合再編を行う」としました。
勤労者施設ということがふさわしくない実態であれば、地区区民館のような地域の施設に位置づけ直せばいいだけのことです。一足飛びに廃止だとするのは強引で、やはり美術館を大規模化したいという区長の意向を通すための単なる理由付けだと考えざるを得ません。
貫井図書館はどうなるのか
また、美術館とともに改築さされる予定の貫井図書館については、その中身がなかなか見えてきていません。具体的にどのようにするのか、いつ打ち出すのかを聞きました。
答弁は、「ゆとりを持った開架スペース、ブックアートキッズスペース、美術書コーナーなどを設置する。喜んで利用いただける魅力ある施設を造っていきたい」としたうえで、どのようにしていくかについては「基本設計のなかで示していく」というにとどまりました。
「蔵書や開架も充実されると考えていいのか」と聞いたことろ、「明るく開放感のあるゆとりをもったものにする。さらなる充実を図れるよう努める」と、ちょっとポイントをズラしたような答弁。図書館として肝心なところが本当に守られ充実されるのか、懸念が残ります。
海外との交流、大規模企画展は
区立美術館を考える会の皆さんが活動していますが、そこで出ている疑問をいくつか聞きました。
区立美術館再整備再整備基本構想では、取り組み例として「海外との交流による大規模な企画展」があります
海外から美術品を借りて展示するには、運送や税関、作品にかかる保険など各段階で費用がかかるといいます。そうした費用も含めランニングコストが大きくなるのではないか。
区は「これまでも海外から作品を借りて企画展を開催している。今後も工夫して、独創的で優れた企画を展開していく。費用がかかるというが、文化財の種類、展示方法は様々であり、一概に言えない。」と答えました。
一概に言えないということは費用が大きくならないということではありません。
公開承認施設であり続けるための費用は
また、公開承認施設をめざすことは変わっていないとのこと。国宝や重要文化財を展示するにあたり、普通は文化庁の許可が必要ですが、公開承認施設として承認されれば、公開後の届け出で足りるようになります。
しかしそのためには国宝などの展示を続けていかなければならない。そのためにかかる費用はどうなのか、聞いてみました。
区は展示費用についはきちんと答えず、公開承認施設になるには学芸員の配置や防火・防犯体制の基準などがあるが、これらは博物館(美術館も含む)の基準でもあり当然守るべきもの。そのために特別な費用がかかるものではない。という、これまたポイントをズラした答弁。
海外から作品を借りるなどする大規模な企画展、国宝・重要文化財の展示などを定期的にやっていこうとすれば、費用がやはり大きくなるのではないか。改築経費に多額の費用をかけるうえに、運営コストも大きくなれば区民の負担は大きくなります。
もちろん美術館再整備に期待を寄せる方もいると思いますが、区民の要求というのは様々です。サンライフ練馬をなくさないでほしいという声もそのひとつ。美術館を充実させようということは否定しませんが、多様な区民ニーズに応えていくという点で、美術館の大改築はバランスを欠いていると改めて思います。
資材高騰——改築費用が膨らむのでは?
最後に、この間建築資材も高騰しており、日本建設業連合会によれば2021年1月以降、建設部門全体で30%アップしているといいます。美術館図書館改築にかかる費用は76億円としているが、90億円以上になりかねないのではないか。建築費用を試算しなおし、区民に示すべきではと問いました。
区は「建築には様々な資材が使われており、全体として30%高騰していることはない。設計受託者からは76億円を超えない想定工事費を提出されている。基本設計においても受託者やイニシャルコストの抑制に努めることにしている。区としても工事費の抑制を求めていく。工事費の再計算をする考えはない」との答え。
いたずらに経費をかけることは当然さけるべきことです。高騰の状況を見定めながら、計画スケジュールの延期もテーブルに乗せておくべきだと思います。
計画の抜本的見直しを
そして何より、区民の合意ができていない計画は抜本的見直しを行うべきであり、サンライフ練馬を存続させる計画にすることを引き続き求めていきます。