10月11日(金)の区議会本会議で、区公共施設使用料の大幅値上げ議案が自民・公明・維新・参政等の賛成多数で「可決」へ。共産党板橋区議団は、原価計算に問題があること、受益者負担率の考え方に問題があること、区が区民、利用者へなんら説明していないこと、区の財政状況からみても値上げする必要がないこと等からきっぱり反対しました。
なお、住民や団体から使用料の値上げ中止、撤回、延期、住民説明会の開催などを求める9つの陳情のすべての項目には「賛成」しました。
私は、本会議で陳情に対し、賛成の立場で討論を行いました。以下、掲載します。
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ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、陳情第67号、陳情第70号から第75号、陳情第78号から第79号の9つの陳情に「賛成」する立場から討論を行います。
この9つの陳情は、区の「使用料・手数料検討会報告書」により、来年4月から公共施設の使用料が大幅に値上げとなることなどから、住民や団体から使用料の値上げ中止、撤回、延期、見送りに加え、住民説明会の開催、減免制度の拡大、値下げ等を求めるものです。
区の「使用料・手数料」検討会は、4年ごとに開催し、使用料と手数料の改定を検討しています。4年前はコロナ禍で見送った値上げも含めて今回8年ぶりの改定となります。検討会報告による区の方針は、使用料の改定率1.4倍を上限に各施設の使用料を2025年4月から改定するものです。
陳情に賛成する第一の理由は、住民参画を保障し、区民や利用者への説明が必要と考えるからです。
区は、昨年7月から4回にわたり18人で構成される庁内検討を行ってきました。しかし、原則4年ごとに改定を行っていること、考え方に大きな変更がないことなどを理由に区民参画による検討を行っていません。
利用者や文化、芸術、業者などの各種団体に何も説明がないまま、受益者負担、負担の適正化という理由で「ご理解ください」という報告では到底納得できないという声が次々あがるのは当然です。9つのもの陳情提出は、区民不在の区政運営への怒りの象徴です。しかも、委員会質疑では区民への周知は、広報いたばし、区ホームページ、施設への掲示などと言いますが、いつになるかも示されませんでした。
指定管理者制度導入施設では、値上げされた怒りの声を事業者が受け止めることになります。今からでも住民説明会を行うべきです。
陳情に賛成する第二の理由は、物価高の影響による区民の厳しい暮らしよりも区のコスト削減を優先しているからです。
今回の改定による効果額は、検討会報告書による1億3229万2千円に検討対象外の区民集会所、区民農園の使用料値上げ分を加えると1億4423万7千円です。しかも、効果額が算出されていない自転車駐車場の値上げ分を加えればさらなる負担を利用者に負わせることになるのです。
厚労省が7月に発表した2023年の国民生活基礎調査では「生活が苦しい」と答えた人は59.6%にのぼります。9月24日、区長が「依然として物価高が区民生活に影響を及ぼしている」と答弁していることからも新型コロナウイルス感染症により深刻な打撃を受ける区民生活を鑑みて改定を見送った4年前と比較しても区民の暮らしが改善しているとは言えません。今回も改定の見送りができたはずです。
にもかかわらず、今回は、区にとってのコストダウンを優先し、区民に1億4400万円以上もの負担増を選択したことは、多くの陳情にあふれる物価高騰による厳しい暮らしの実態に背を向けるものであり、納得の得られるものではありません。
区はここ数年、年間100億円以上の積み立てをしています。区の財政状況からみても値上げする必要はありません。
陳情に賛成する第三の理由は、公共施設は低廉であるべきだからです。
公共施設使用料の算出は、「原価計算」と「負担割合」が大きな比重を占めています。区は、公共施設が果たす行政目的や区民の利用機会の確保などは棚に上げ、施設にかかる原価を維持管理費、職員人件費、減価償却費によって算出し、施設にかかる経費のフルコストの80%を利用者負担としてきました。
そもそも公共施設にかかるコストは、区民全体の財産であり、施設を利用している人と利用していない人を比較する「受益者負担」と言う考えを持ち出すべきではありません。誰もが利用しやすく、多くの人の利用を促進することこそ板橋区の区政の発展に寄与することになるのです。「税の再配分」と考え、人件費や減価償却費を含めず、負担割合を大きく引き下げて、安価で利用しやすい料金にすべきです。
今回の改定では「市場的かつ選択的」にあたるとし、体育施設やものづくり研究開発連携センター、八ヶ岳荘など少なくない施設を90%まで拡大しました。
加えて、今回から原価計算に「造作物」まで含め、施設のフェンスや建物前の道路なども対象に広げています。これによって、例えば、加賀スポーツセンターでは、建物周辺の道行く人が通るタイルづくりの広場や中心施設など1億円以上の改修経費が原価計算に入れられました。
その結果、加賀スポーツセンターの「武道場団体貸し切り」では、午後の使用料が現在の3900円から5500円へ1.4倍に上がりました。
利用者が使わない部分まで使用料に転嫁することは「負担の公平性」などとは到底言えません。
区は「受益者負担の適正化」といいますが、料金を引き上げて利用できる人が減少することになれば、公共の福祉の向上という公共施設ごとの役割や機能の後退です。
また、65歳以上5割減額は美術館と体育施設しかなく、障害者個人への減免はあっても、障害者団体3割減額も体育施設のみです。アートギャラリーや集会施設には障害者個人への減免規定もありません。減免規定の対象拡大について「社会情勢に変化はない」として、「減免の改定は必要ない」と結論付けそれ以上の検討を行わない姿勢は問題です。
最後に、公共施設は住民の福祉向上を目的に税金で建設され運営されてきました。また、区民の共有財産であり、活動の砦です。少なくとも案の段階で区民説明会を実施し、広く区民の声を反映すべきです。
以上の理由から9つの陳情のすべての項目に賛成し、私の討論を終わります。