今日は、区議会第4回定例会の最終本会議でした。
今定例会に区長提出の「いこいの家を廃止する条例」が出され、12月10日の最終本会議で共産党、社民党、無所属の会の井上議員以外の賛成多数で可決となりました。これにより、令和4年3月31日で「いこいの家」は廃止となります。
私は、区議団を代表して討論を行いました。
以下は、討論の全文です。
ただいまより、日本共産党板橋区議会議員団を代表し、議案第67号 東京都板橋区立いこいの家条例を廃止する条例に反対の立場から討論を行います。
本議案は、令和4年3月31日でいこいの家を廃止するものです。
いこいの家は、「老人福祉法」に基づく60歳以上の高齢者の福祉施設として昭和49年から整備されてきました。当初は、浴室、娯楽室、茶室などがあり、自宅から歩いて行け、ふらっと立ち寄れる無料の施設として地域の高齢者に親しまれてきました。
その後、区は、平成24年から入浴事業の縮小を強行し、利用者を減少させてきたことから多世代が利用できる施設へ平成28年に転換し、入浴事業を平成29年に廃止しました。
しかし、区は多世代が利用できる施設へ転換後も利用率が低い施設があること、利用状況や施設維持等を含めて抜本的な利活用策を講じる必要があるとして、現在13カ所あるいこいの家を廃止したうえで、用途変更するとしています。
その内容は、1.介護予防やフレイル予防、健康づくり事業の活動拠点、2.地域包括支援センター等の施設の適正配置、3.地域センターや区民集会所として転用、4.売却等を含めた資産活用の4点です。
反対する第一の理由は、高齢者の居場所を奪うことになるからです。
区は、委員会質疑の中で「いこいの家の廃止は介護予防を充実させるための大きな方向転換。高齢者の居場所をなくすという観点ではなく、活動するためのきっかけづくりの施設整備」と答弁しました。
しかし、区の利活用方針により、西台、東新、赤塚いこいの家は完全に廃止となります。その他10か所のいこいの家も用途が転用されるため、区も言ってきたようなふらっと立ち寄れてお茶飲みしたり、おしゃべりできる場所ではなくなります。
賛成を主張した委員からは、「いこいの家がなくなるということではなく、積極的利活用である」、「時代の変遷を考えたうえで、施設の更新、利活用は一つのステップとして必要なこと」という意見がありました。
しかし、いたばしいこいの家など介護予防スペースとなる施設では、「5人以上の団体で65歳以上の区民が過半数で構成されていること」などの登録要件が課されるため、今までのいこいの家の代替にはなり得ません。実際、これまで2~3人で囲碁や将棋を楽しんできた方々などから「5人以上のグループでないと登録できない。ふらっと一人で立ち寄れなくなるのは困る」と怒りの声が寄せられています。この間、いこいの家の存続を求める陳情が繰り返し出されてきたことからも、利用者が求める「無料でいつでも立ち寄れる居場所」ではなくなってしまい、高齢者施策として大きな後退となります。
第二の理由は、利用率が上がらないことは廃止の理由にはならないからです。
平成22年16万4千人いた利用者は、入浴事業が完全に廃止された平成29年には4万人余り、4分の1にまで激減しました。
利用率が下がった最大の理由は区が利用者のニーズだった入浴事業を廃止したからです。その後、多世代が利用できる施設へと設置目的の条例まで改正し、赤塚、仲宿いこいの家は浴室を音楽練習室へ、大和いこいの家は浴室を調理室へ転用するなど10か所の施設に1億1600万円もかけて改修してきました。
しかし、多世代交流施設へシフトした後も利用率が低い施設があるとして2年後の令和元年には利活用方針が示されました。
本来、区民の居場所、多世代が集える場として発展させていく必要があったにも関わらず、利用者を増やすことができなかったことは区の失策であり、反省すべきです。
第三の理由は、説明責任が果たされていないからです。
区は今年11月、いこいの家の利活用について各地域で説明会を行いました。広報いたばしの掲載、町会掲示板の掲示、区のホームページ掲載、各いこいの家、地域センターへチラシ配布するなど丁寧な周知をしたと言いますが、参加者にばらつきがあり、2人しか参加していないところもありました。また、桜川いこいの家の説明会には資料の配布さえなく、「なんの説明かわからない。全体像が見えない」「参加者に説明する気はあるのか」「利用者の声を反映してくれるのか」と不満の声がだされました。委員会質疑のなかで、「各所管との調整に時間がかかった」「混乱を招いてしまった」と答弁しましたが、廃止ありき、利活用ありきに終始する説明会では区民や利用者の納得が得られません。
利用者や区民の声を聞く、区民への周知をさらに広げる姿勢があるならば、十分な準備をし、説明会の開催時期を遅らせる等努力をすべきです。
第四の理由は、SDGsに取り組み、だれ一人取り残さないとする区の方針に逆行するからです。
コロナ禍のもと、「孤立化」を余儀なくされている高齢者は少なくありません。この状況がいつまで続くのか見通しが持ちにくいなか、運動不足や介護度の重症化、認知症が進むなどの弊害も社会問題になっています。
2030年、板橋区の高齢者人口は3割を超えるとされ、団塊の世代はまもなく75歳になります。
第2、第3の人生を地域でむかえるにあたり、身近に生きがいづくり、コミュニケーションを図れる場所、のんびりと過ごせる居場所は「介護予防」の点からも、「健康増進」の点からも重要です。
2025年には区の高齢者人口がピークに達すると予測し、だれ一人取り残さない、SDGsに取り組むとする区の方針に照らせば、高齢者の居場所はますます重要です。経費の2割削減とする公共施設の総量抑制方針に固執している場合ではありません。廃止や転用ではなく、本来なら施設の拡充こそ図るべきです。
以上の理由から本議案に反対し、私の討論を終わります。