コロナ危機は、保健所の体制の弱さを明るみに出しました。
検体採取と回収、入院手続きや車の手配、陽性者や濃厚接触者への支援、コールセンター対応などに忙殺され、なかなか電話がつながらない、医師が必要と判断してもPCR検査が受けられない事態が起こりました。
こうしたことが起こった背景には、、保健所法が1994年に地域保健法に改定され、それまで全国847カ所あった保健所が、2020年には469カ所に削減されたこと、23区でも1990年当時53カ所あった保健所が現在23カ所にまで減らされたことがあります。
練馬区も2000年以降、2か所から1ヶ所に統合され、保健所の医師数は三分の一に減っています。
東京自治体問題研究所の調査では、特別区で区民一人当たりの保健所予算を計算したところ、2018年で台東区が7355円でトップ、練馬区は1824円で15位でした。
いざというときのことを考えず、ゆとりのない体制へ弱めてきたこと、財政削減のために備えを惜しんできたことが、今回の危機に対し対応しきれない状況を作り出してきたと言えます。
所信表明で、区長も「保健所の体制強化は大きな課題」だと述べていますが、感染症対策に人手が取られ、本来業務が手薄にならないよう万全の対策を期すべきです。
質問で2つの提案をしました。
一つは、医師や保健師を中核とする保健所職員の抜本的な拡充です。
二つは、23区で保健所内に自前のPCR検査施設をもつ自治体は、新宿、墨田など7カ所ありますが、練馬区でも、疫学調査を含めて、より迅速で正確な対応を図れるよう、自前の検査機能と技師の配備を検討することを提案しました。
区は、急激に業務が増加する場合には、「速やかに体制を確保することで、機動的に対応できている」とし、「感染症対策は20人体制で運営してきましたが・・・保健師の兼務発令、人材派遣の活用・・・などにより、現在は64人体制としている」と答弁。
業務が大幅に増加したことで職員を3倍以上増やしたということです。もし危機が収まった後も元に戻さず、強化した体制を(64人そのままとは言いませんが)一定保つことが必要だと思います。
また、独自のPCR検査機能については区の検査室が施設基準に満たないため難しいということでした。
憲法25条では、「国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び、公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とあります。
公衆衛生の第一線機関である保健所は、これまで、結核や母子保健などに力をそそぎ、公害や職業病、小児ワクチン等における先進的な役割を果たしてきました。
それがいま“自己責任”や”自衛”へと個人に責任転嫁され、政治の責任放棄が際立っています。
SARS、鳥インフルなど過去30年間で30種類の新たな感染症が現れています。今後も森林など自然破壊によって、その奥深くにあったウイルスによる、新たな感染症が発生する可能性は否めません。
保健所の役割は、業績主義とは相いれないものです。新自由主義と決別し、公衆衛生の備え、そのためのゆとりある体制を構築することが求められています。