新型コロナ拡大が影響し、性暴力被害が増加しています。今年4~9月のワンストップ支援センターへの相談が前年比15.5%増の2万3,050件になっています。
被害者は10代が多く、子どもは被害にあっていることに気付かず深刻化しやすいといいます。
現代は様々な情報がインターネット等を介して不正確で危険な情報が氾濫する一方、性に対する十分な教育がされていないことで、望まない妊娠に苦しむといったことを招いています。
政府は2022年までの3年間を「性犯罪・性暴力対策の集中強化期間」と定め、教育に力を入れるとのことですが、期間を区切らず、恒常的に取り組むべき問題です。
政府の方針「生命の安全教育」は、水着で隠れる部分は人に触らせないなど大切な内容を含んでいます。
しかし学習指導要領では「妊娠の経過は扱わない」とする歯止め規定があり、踏み込んだ内容となっていません。
人権も含めた包括的な性教育を
性交についての適切な学習と人権を結び付け、相互尊重や多様性、ジェンダー平等など包括的な性教育を行うことが必要です。
区として、産科医や助産師など外部講師を活用した性教育を位置づけ、多くの学校で行うよう求めました。
刑法・性犯罪規定における暴行・脅迫要件の撤廃を
3年前、110年ぶりに刑法・性犯罪規定が改正されましたが、暴行脅迫があったか、被害者が抵抗不能であったのかを立証できなければ有罪にならない、性交同意年齢が13歳のままなど、課題が残されています。
裁判では、同意のまい性行為であったことが認められても、それだけでは有罪となりません。被害者が抗拒不能(抵抗不能)であったか、また加害者がそれを認識していたかが争点とされています。
被害者は嫌なら抵抗すればよいと考えるかも知れませんが、むしろ思わぬことに凍り付き、声も出せず抵抗できなくなってしまうことが多いといいます。それを同意していたと取られてはたまったものではないと思います。
当事者団体の代表は、「同意の問題が重要。被害者たちは無力化させられる。これが性暴力の本質」と述べています。
そうした立場で法改正に対する区の意見をあげるよう求めました。
「暴行、脅迫」や「抗拒不能」などの性犯罪の要件は見直し、同意があったかどうかを性犯罪成立の核に据えるべきだと思います。暴行、脅迫は同意、不同意を判断する重要な要件になるし、罪の重さを判断する要件にすればよいと考えます。
全会一致で「性犯罪に関する刑法既定の見直しを求める意見書」が可決
今定例会では、11月に学習会を行なったことも契機となり、「性犯罪に関する刑法既定の見直しを求める意見書」を、全会一致で可決させることができました。
野党の女性議員が与党も含め各会派に働きかけをしていたところ、与党・自民党側から提案されました。不同意の性交や地位関係性を利用した性犯罪の規定、性交同意年齢の引き上げなど、性被害当事者の実態に即した法改正を求めているなど、賛成できる内容でした。
与党から提案されたとはいえ、各会派のなかでも理解の度合いに違いがあり心配しましたが、最終的には可決に至り、ホッとした次第です。
他自治体でもこうした意見書が可決されています。ぜひ刑法規定が見直され、1人でも多くの被害者が泣き寝入りせずにすみ、「心の殺人」とも言われる悪質な加害行為が無罪になる理不尽がなくなるよう望んでいます。
性犯罪被害者への支援強化を
被害者への総合的支援を行なうワンストップ支援センターSARC東京がありますが、都内1ヵ所だけです。都内に複数設置すること、区もSARC東京と連携し、被害者を早期に適切な支援につなげる取り組みを強化するよう求めました。
区はホームページや各種リーフレットでワンストップ支援センターを広く周知しているとしたうえで、刑法については現時点では国や都に法改正を働きかける考えはないと答えました。
性教育については、保健分野での学習中心にただしい知識を身に付けさせ、適切な意思決定や行動が選択できるよう、発達段階に応じた指導を行なっている。3年間に区切ることなく、充実を図っていくとしました。
そのうえで、全ての学校に一律に実施を求める考えはなく、都教育委員会が配布した「性教育の手引き」に基づき、児童生徒の実態を十分踏まえ保護者に説明をしたうえで、実施するなど慎重な対応を各学校に促しているということです。
日本では性行為に対する同意能力があるとみなされる年齢が13歳からとなっていますが、その年齢に達するまでに充分な知識、判断力を持てるような性教育が行なわれていません。
同意年齢を引き上げるかどうかの議論が行われていますが、いずれにしろ同意年齢に達するまでに性教育を行うことが前提でなければいけないのではないでしょうか。