地方自治法改定案は地方自治を壊す

2024年第二回定例区議会(6月17日)、地方自治法改定案について区長の認識を問いました。以下質問文です。

物価高騰、実質賃金は25か月連続マイナスという中で、区民の生活をどう支えるかが政治に問われています。しんぶん赤旗のスクープで明らかとなった裏金問題で「庶民には増税、自民党は脱税」の国民の声に対し、政治資金規正法改定案には企業団体献金禁止を盛り込みませんでした。政府は1回限りの定額減税と納税額が少ない人には調整給付を行いますが、その準備に自治体や企業に膨大な負担がかかっています。国民一人に一律4万円給付のほうがはるかに簡単だったのではないでしょうか。

コロナ感染症対策などの経験からも、最も身近な政府として地方自治体の果たす役割が大きく、国の施策の下請けのような仕事が増えれば増えるほど区民によりそった自治体独自の事業が困難になると考えます。今国会で審議されている地方自治法改定案は、地方自治をないがしろにする危険があります。憲法は地方自治を明記し、政府から独立した機能を持つ「団体自治」と住民の意思にもとづく「住民自治」を保障しました。戦前の中央集権的な体制の下で自治体が侵略戦争遂行の一翼を担わされたことへの反省からです。歴代自民党政権は自治体の権限や財源を抑制し続けてきました。1999年の地方分権一括法では「地方分権」を掲げながら「法定受託事務」を温存し、自治体への指示、代執行など国の強力な関与の仕組みをつくりました。今回の改定案は国の関与を最大限抑制すべき自治事務にまで国が指示することを可能にするものです。特に、新設される「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断すれば地方自治体に指示ができる「指示権」の枠組みについては、「事態」の類型も判断基準も審議で明らかにされていません。政府は法改定の理由にコロナ感染症対策などをあげています。しかし能登半島地震に見るように、災害時に対応がすすまない大きな要因は、地方公務員を減らし地方の財源を削ってきたことです。必要なのは、迅速な対応ができる権限、財源、人を国が自治体に保障することです。今回の改定案は、住民の利益を守る仕事である「自治事務」についても国の指示を可能にし、自治体を国に従属する立場に置くものです。憲法が保障する地方自治を根底から踏みにじるもので、絶対に許すわけにはいきません。そこで2点質問します。

1つ目は、今回の改定案について、区長は地方自治のあり方、及び、改定案をどのようにうけとめておられるのか、その認識をお聞かせください。

2つ目は、国から事前に改定案についての説明や意見の聴取があったのかどうか教えてください。

区長の答弁

1,平成12年(2000年)から地方自治法が改正された。役割分担で地方自治は成り立っている。2019年台風19号のような自治体の枠を超える対応、都道府県を超える力が必要、マイナスではない。

2,地方制度調査会で地方6団体で意見を述べている。意見調書は特にないが議論の内容は把握している。

区長答弁はほぼ予想していましたが、閣議決定で地方自治を無視して国が指示できることが問題とあらためて意見を述べました。

6月19日、参議院本会議で、新たな「指示権」を導入する改定自治法が、自民、公明、維新、国民などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党、立憲などは反対しました。日本共産党の伊藤岳議員は、国の指示を地方自治体は拒否できるかとの自身の質問に、政府が「指示にはしたがっていただく」と答弁したことにふれ、「地方自治体を国に従属させる仕組みをつくる乱暴極まりないやり方は、これまで歩みを進めてきた地方分権を否定するだけでなく、憲法が保障する地方自治を根本から破壊するものだ」と厳しく批判しました。(しんぶん赤旗6月20日)

地方議会の議員として、岸田政権と、改定案を成立させた自民、公明、維新、国民などの政党に強く抗議します。同時に政治資金規正法案も自民、公明で強行成立させたことにも重ねて抗議するものです。