2022年度決算認定には反対

決算特別委員会で各会派が総括意見を述べ、日本共産党以外はすべて賛成でした。日本共産党の反対意見は次の通りです。長いですが掲載します。

日本共産党の総括意見を申し上げます。はじめに、区民生活をめぐる状況を見ておきたいと思います。

厚生労働省が9月8日に発表した7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、1人当たりの賃金は物価を考慮した実質で、前年同月比2.5%減っています。物価高の勢いに賃金の伸びが追いつかず、減少幅は6月の1.6%から拡大しました。実質賃金マイナス16か月では生活のやりくりも限界です。

2022年度決算の歳入は、前年度より総額は減額しているものの、財政調整交付金1110億円は前年度対比で129億円増、特別区税586億円は21億円の増となっています。コロナ感染症の広がりが続く中での増収は、財政調整交付金の増額などにみられるような大企業の利益幅が大きかったことが考えられます。

また、主要6基金は277億円増えて過去最高の2453億円となりましたが、もっと有効に活用すべきでした。今年度に実施した課税世帯にも何らかの生活支援を実施する予算は十分にあったのではないでしょうか。区民生活では貧困格差が広がっているといえます。生活困窮者への継続的な区の独自給付を、課税世帯でも年金収入が主な世帯への給付金の支給を引き続き行うべきと考えます。

2022年度の決算の認定審査にあたり、私たちは次のような観点で、慎重に審査しました。第1に物価高騰に苦しむ区民の命と暮らしを守る立場に立っていたか、第2に、地方自治の目的である住民福祉の増進のために、税金が適正に使われたか、第3に、区政に民主主義と公正がつらぬかれたか、第4に、区民生活に深い影響を及ぼす国の政治にどのような態度をとったかです。

2022年度決算には、学校図書館司書全校配置、低所得のひとり親世帯への子ども一人5万円支給、おたふくかぜワクチン接種一部助成、困窮世帯へのエアコン設置助成など区民の願いにこたえる前進面もありましたが、以下に述べるような区政の基本的な問題があり、本決算の認定には明確に反対するものです。

第1の反対理由は、くらし・福祉の切実な要望に応えない姿勢です。

2022年度は、新型コロナ感染症第7波、8波による影響が大きく、収入が減少した世帯も少なくなく、物価高騰も重なり、不安な毎日が続きました。

他区に先駆けて制定した公契約条例の実績はまだ少なく、適用範囲1億8000万円以上の引き下げ、労働報酬単価の引き上げが必要ですが、その具体策を示しませんでした。

今年1月の第3課生活保護利用者遺体放置事件の教訓を踏まえ、区の生活保護行政の在り方の見直しが必要です。社会福祉法で査察指導員やケースワーカーは、「社会福祉主事でなければならない」と定められているのに、有資格者比率が引き上がっておらず、資格取得支援の補助を毎年3人分しか予算化していない区の姿勢は重大です。また、生活保護制度を周知するポスター作製を拒む姿勢も問題です。

保育士不足、不適切保育等課題は山積みです。保育の質が問われる中「保育の質ガイドライン」が策定されました。保育の質の要は保育士であり、保育士が安定的に働く環境が求められますが、株式会社立の人件費割合が運営費の50%を下回る園の存在が区内でも明らかになりました。設置責任者として、安心して預けられる保育園を目指すべき人件費割合を50%以上にするルール設置を求めても、否定する姿勢は問題です。また、保育従事職員宿舎借り上げ支援事業は都の基準通り保育士・看護師以外の職員にも拡充すべきです。

第2の反対理由は、国の高規格堤防と一体の土地区画整理事業やPark-PFIによる公園再整備、住まいや災害対策支援の不十分さです。

篠崎公園地区では、区の区画整理と国のスーパー堤防や都立公園の高台化が一体で進められています。この間、国と都の位置づけによる「高台まちづくり」が強調されていますが、これは、一部を除けば定義や基準もなく、「高台の避難先」などイメージに過ぎません。避難先の具体的な規模も示さず、気候変動の時代に、イメージでまちづくりを進めることは、公共事業としても問題です。スーパー堤防を「高台まちづくり」と称して、住民負担の大きい区画整理と一体で進めることは、やめるべきです。

総合レクリエーション公園、新左近川親水公園では、Park-PFIを用いた公園再整備が進められています。今後の樹木の管理は、区の「緑を守る」という思いを担保する仕組みはありません。スケボーパークは、区民意見募集で、賛否両論があった為「整備保留」とされましたが、PFI事業者からの提案を取りやめる判断を区ができるのか、不透明です。そもそも、住民等の意識やニーズを事前に把握しないまま、事業者との調整を優先した区の姿勢は、住民軽視そのものです。

住宅リフォームの工事費に助成が無いことは問題です。現金で工事費を払う人にも助成する公平な制度を求めても、融資の利子補給に固執する姿勢は容認できません。緊急防災ラジオや止水板の普及への区の支援に消極的な姿勢も問題です。

第3の反対理由は、区民生活を守ることと矛盾する国政推進の姿勢です。

消費税は低所得者の負担が重く、10月からのインボイス制度はフリーランスや小規模事業者などへの増税であり、反対のオンライン署名が54万人集まりました。区民生活を守る立場から国に消費税の減税を求めるべきです。日本共産党は、大企業優遇税制の是正、法人税率を28%に戻す、所得税最高税率の引き上げなどを提案しています。また、区の利用料使用料への消費税転嫁はやめるべきです。

マイナンバーカード作成及び健康保険証などへの紐づけを急速に進めた結果、問題が多発し、政府の個人情報保護委員会がデジタル庁と国税庁を行政指導する事態です。また、厚生労働省は別人の健康保険証の誤登録事例が9月末で8544件あったとしました。個人情報の漏えい事故も減らず2022年度は171件発生しています。区は、皆保険制度を守るためにカードと健康保険証の一体化を急ぐべきとしましたが、利用率は8月に4.7%で国民の不信は広がっています。カード作成と運用はやめるべきです。

羽田空港荒川沿い新ルートによる区内陸域通過は、新ルート実施前の4.3倍に増加しました。4つの新ルートでは、荒川沿いが最も運用時間が長く航空機騒音は区民生活に大きく影響します。区民に大きな負担をかけている新ルートは中止し海上ルートに戻すことを求めたものの、区はその考えはないとし、区民の声を聴くアンケートも実施は考えていないとしました。

第4の反対理由は、教育の充実のための区独自の教職員配置を行わない姿勢です。

小中学生の不登校が続き、29万9048人となりました。子どもたちが学校を学びの場として楽しく過ごせるために子どもに寄り添える教職員増員が必要です。しかし、区教委は、都や国に定数増を求める立場は明言せず、小1支援員や講師の独自配置はお金がかかると否定的です。補習事業には約6億円活用していますが、6億円あれば講師を各学校に複数配置し、より豊かな学校教育ができます。

学校給食費無償化は喜ばれています。さらに、義務教育の無償化につながる教材費の補助、就学援助制度の拡充が必要です。また、奨学事業においても、一般財源を投入しての給付型の奨学金拡充を行うべきです。

特別支援巡回教室の子どもたちへの学習支援は週1時間が75%、2時間が23%です。先生一人が12人という原則を超えて、14人担当という拠点校があり、必要な支援時間の確保が難しい状況があります。拠点校を増やし講師配置も含め適切な教員配置を行う姿勢がありません。

英語のスピーキングテストの都立高校入試活用は、入試の公平性・公正性に課題があり中止すべきです。しかし、区教委は、都教委のことであり意見を述べる立場ではないと表明したことは問題です。

 

国民健康保険事業特別会計について申し上げます

昨年度の国保料値上げは、平均3606円で一人当たり12万4452円となり、値上げが毎年続いています。払いたくても払えない世帯への支援のために、子どもの国保料均等割は免除するなど、さらなる国保料の軽減が必要です。そのために、法定外繰り入れを行うべきです。また、命に関わる1か月の保険証の発行はやめて、少なくとも6か月にするべきであり、資格証明書は窓口10割負担となるため、発行は中止すべきです。

介護保険事業特別会計について申し上げます。

物価高と年金の少なさのなか、保険料の支払いが困難です。滞納者の37.1%が、第1段階の方であり、区独自のさらなる減免が必要です。国は、利用者2割負担の対象拡大や老健施設などの多床室有料化、さらに要介護1・2の在宅サービスの保険給付外しや、ケアプラン作成の有料化などを進めています。このような負担増を強いる介護保険改悪の動きは重大です。第9期介護保険計画の具体化に当たり、これ以上の区民負担増及び介護保険料の値上げはやめるべきです。

後期高齢者医療特別会計について申し上げます。

医療費の窓口負担2割が昨年10月から導入され、高齢者からの怒りの声が届いています。そのうえ、保険料値上げでは年金が頼りの生活はひっ迫するばかりです。高齢者の命にかかわる短期証発行はただちにやめるべきであり、後期高齢者医療制度そのものの廃止を求めるものです。

以上で日本共産党の総括意見とします。