「香君」KOUKUN
上橋菜穂子作「香君」KOUKUN上下巻を読みました。なかなか時間がとれず、購入してから1か月以上たっています。5月の連休に読もうとしたのに。台風で予定がなくなり、今日一気に読みました。アイシャという主人公の歩みに、「獣の奏者」のエリンを思い浮かべました。上橋菜穂子さんの「精霊の守り人」に感動し、「鹿の王」「獣の奏者」と読んできました。上橋さんの描く女性主人公は、自分の考えをしっかり持って行動し、社会を変える力を発揮します。ファンタジーですから、現実とは違いますが、そういう世界があるかもと思わせる構成力も素敵です。中学生が夢中になって読むのでは。でも、今はタブレット端末かスマホでしょうか。小説を読んで、面白さをたくさん味わってほしいなと思いながら読みました。
主人公は「香り」を感じる力が優れています。人が感じる「匂い」をはるかにこえた、生きとし生きるものの発するにおいをとらえ、「声」も聴きとるのです。なんでも聞こえることに「怖さ」も感じながら、植物の声を聴きながら、自分で考えて行動していく、その聡明さと勇気に感動です。後半で、「香君」としてふるまう場面があります。クライマックスの場面です。アイシャの言葉の選び方、そのサポートをするマシュウに引き込まれます。その5年後のアイシャの様子も描かれ、ほっとします。
私は、小学生の時に世界文学全集を親に買ってもらい、夢中で読みました。裕福な家庭ではありませんでしたが、子どもを大事にしてくれました。私の子どもが伝染性の病気になり、預け先がないので田舎から母親に出てきてもらいました。母親が、私の本棚から「母をたずねて三千里」を見つけて読んで、いい話だなといった事がいまでも思い出されます。母親の時代は、忙しく働き、本を読む時間などなかったからでしょうか、私にはおしげもなく、大学進学とその費用をだしてくれたこと、今でも感謝しています。母が他界して13年たちます。読書で新たな感動をするとき、母親のことが思い出されるのです。